今作の作品のタイトル「獅子曾孫」には、長い年月をかけて受け継がれてきた伝統や、そこに刻まれてきた人々の生きた証を未来へと残していきたいという想いが込めました。ベルギーでの展示を終えた後、日本に戻ってニュースを観た際、地方祭りで披露される獅子舞の後継者不足という課題に触れ、何か自分にも貢献できることはないかと考えました。そこで、かねてより守りたいと思っていた日本の伝統文化にフォーカスし、100号という大きなキャンバスを使って迫力ある獅子舞の姿を表現することを決意し描いた作品になります。
また今回のポージングには「対比」という効果を取り入れています。前回の作品では、現代社会に管理され、自分らしさが制限されているイメージとして「耳が切れた状態」や「タグのついた姿」を描きましたが、本作ではそれらを取り払うことで、より自由で力強い獅子の姿を示そうと試みました。さらに、凛とした印象と強さを際立たせるため、髪をピンクから白へと繋ぐ大胆なグラデーションを採用。伝統的なモチーフでありながら、現代の感性と融合した独自の獅子舞として、今に通じる新たな息吹を吹き込みたいという想いを込めました。